The Kamoto Medical Association |
小泉構造改革の意を受け、増大する医療費を抑制しようと、このところ立て続けに医療制度改革案が出されている。 主なところでは、老人医療の対象を75歳以上にする案、健保本人の負担を二割から三割に上げる案、国保の保険料を上げる案、老人外来医療の負担限度額を現行の三千円〜五千円から引き上げる案など患者国民に負担を増す案が中心になっている。 |
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ここでわが国の医療制度を諸外国と比較してみよう。昨年のWHO報告によると、わが国の平均寿命、健康寿命、健康達成度の総合評価はいずれも世界一であり、しかも、総医療費の対GDP比はOECD加盟国中18位と少なかった。 主要先進国の医療を含む社会保障への国庫支出を対GDP比で見ると、ドイツ15.6%、イギリス15.1%、フランス14%、アメリカ11.2%に対し、わが国は9.1%しかない。 これら先進国中、わが国と同じように公的医療保険制度を採用している国で患者負担を比較してみると、ドイツ6%、フランス11.7%に対し、わが国は15.1%になっている。 すなわち、わが国の医療制度は、極めて少ない費用で最大の効果を上げており、医療に無駄が多いわけではないし、膨大な費用で国家経済を圧迫しているのでもないと言える。また、少ない費用にもかかわらず、患者の負担は既に他国より重くなっている。 現在、わが国は深刻な不況にあるが、その原因の一つに消費の伸びないことが挙げられている。前述のような患者負担を増す政策が実行されればますます消費は落ち込み、不況の回復は困難になる。 不況のときこそ、国民が安心して働けるような医療保障が大切で、世界に誇るわが国の医療制度を改悪すべきではない。医療制度を守る財源は異常に多い公共事業費を削減するとか、不当に高い薬価を適正化するとか、減り続けている事業主の負担を増やすとか、取るべき手段はほかにある。 <平成13年9月20日木曜日 熊本日日新聞 掲載より> |
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