The Kamoto Medical Association |
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副会長 上塚 高弘
全国有床診療所連絡協議会(全国有診協)は昭和63年に福岡、神奈川の先生方が中心になって発足、初めは一部の跳ね上がり者の集まりと、日医からは冷たい扱いを受けていたが、会員の真摯な、しかも節度ある訴えが次第に日医に認められ、最近では必ず日医会長、副会長と担当理事が出席し、有床診側の熱い訴えを受け止める意義ある会となっている。
私は、今まで個人会員としてこの会に参加していたが、今年からは本県も県医のもとに有床診療所協議会が発足し、協議会理事の肩書きで出席した。
現在全国有診協には、県単位の協議会27、市単位のもの3が加入し、他に個人会員が329名いる。はやく、全ての都道府県に協議会が出来てほしいものである。
今年の総会は、三重県四日市市で開催された。1日目は総会と懇親会があり、坂口厚生大臣(三重県出身)も出席し、盛大であった。
この場で、全国有診協の内藤会長から坪井日医会長へ下記の要望書が手渡された。
要望書
(1) 有床診療所一般病床の入院料は、あまりにも低額である。このままでは、有床診療所の経営はやがて破綻する。急性期を含む一般患者に対する入院料の早急かつ大幅な引き上げを要望する。
(2) 有床診療所療養病床の入院料は、同一施設基準でありながら、病院より低く設定されている。療養病床の病診間格差是正を強く要望する。
(3) 有床診療所は介護者を配置しても点数の加算がない。有床診療所一般病床においても、病院と同じように看護補助者に対する評価を要望する。
(4) 次期医療法改正に当たっては、13条の撤廃とともに、「日医小規模入院施設検討委員会報告書」を基軸とした制度の法制化を要望する。
(5) 療養病床入院患者など入院基本料算定患者の他科医療機関受診を阻んでいる、現診療報酬点数表上での制限条項の撤廃を強く要望する。
(6) 病院建て替え時に認められる割増償却及び特別償却を、診療所にも適用するよう要望する。
また、最近の「聖域なき改革」に危惧を抱き、次の決議文が採択された。
先に政府は経済財政諮問会議及び総合規制改革会議等を通じて、一連の改革の方針と骨格を公表した。
これには、医療費の総枠管理、医療機関と保険者の直接契約、更には混合診療の容認や営利企業の医療参入など、極めてドラスティックな施策が列挙されている。
バブル崩壊以降、医療保険制度には、頻繁かつ姑息的に財政優先の形で改革が行われてきた。
今回示された基本方針もまた、その全てが経済優先の発想に基づくもので、仮にこれが実現されれば、フリーアクセスを基本としたわが国の国民皆保険制度を崩壊の危機に追い込み、医療の公共性はもとより、憲法が保障する国民の生存権すら危うくしかねない。
更に、今回の提案を行った有識者、学者集団の提案には医療のプロの意見が入っていないことは極めて遺憾で、その手法には基本的に問題がある。政府は医療現場・医療担当者の意見にも真摯に耳を傾けるべきである。
深刻な少子高齢社会が進行する今、将来を見据えた理念に基づくよりよい医療制度の構築には、更に慎重な論議を深めることが必要で、一部の有識者、学者のみによる無謀な提案・決定に我々は強く反対する。
右、決議する。 第14回全国有床診療所連絡協議会総会
平成13年8月4日
2日目はまず、「21世紀の新しい有床診療所を目指してー医療保険と介護保険の間でー」と題してシンポジウムが行われた。6人のシンポジスト(1人は中小病院)から発表があったが、いずれも常勤か非常勤の複数の医師がおり、3施設は老健施設を併設していた。
発表後、会場から、「老健施設を併設しなくてもやっていけるような、診療報酬でなくてはいけない」という発言があった。これに対し、出席者から賛同の拍手があり、全国有診協の内藤会長も同感であるといわれた。
私は、昨年の総会で日医の石川副会長に質問し、「小規模入院施設について日医で再検討を行う」という言質を得ていたので、その後どのような検討が行われたか確認しようとしたが、時間が足りなくて発言の機会が与えられなかった。
特別講演?は、厚生労働省健康局長篠崎英夫氏の「健康日本21−21世紀の国民健康づくりー」で、健康の自己管理の重要性などが話されたが、特に有床診療所の抱えている問題とは関係ないことだった。特別講演?は日医会長坪井栄孝氏の「政策集団としての日本医師会の進路」で、日医の進むべき方向を示されたあと、小泉内閣の経済財政諮問会議や、総合規制改革会議のメンバーに一人も医師がいないことを指摘し、これでは適切な改革派できないと批判された。
今回の総会はそれなりに有意義ではあったが、もっと会員の声を執行部に届けさせるように、十分な発言の時間のある企画が必要だと感じた。